「面談はしているのに決定が増えない」「成果が出るCAと、伸び悩むCAの差が大きい」。人材紹介会社の経営者や事業責任者がこうした課題に向き合うとき、面談件数や行動量を増やすだけでは改善しないことがあります。
CA(キャリアアドバイザー)の成果は、面談の技術だけで決まりません。まず土台になるのは、「集まる求人・決定が出る求人」の見極めです。そのうえで、求人提案から選考までの対応や、CAが候補者支援に使える時間を整えます。
日本人材紹介事業協会の2026年7月調査では、回答99会員の35.4%が、経験の浅い社員の育成・教育を運営上の課題に挙げています。個人の経験に頼る支援を、組織で見直す視点も必要です。 調査結果を見る。協会会員の調査であり、小規模企業だけの集計ではありません。
面談しても決まらないときは、まず「集まる求人・決定が出る求人」を見極めます。その土台を整えたうえで、工程の可視化、支援の判断の共有、CAが候補者に向き合う時間の確保に取り組みます。
まず「集まる求人・決定が出る求人」を見極める
面談数やCAの対応を見直す前に、まず確認したいのが扱う求人です。人材紹介の集客で最も重要なのは、候補者から反応が得られる「集まる求人」と、選考が進み入社に結びつく「決定が出る求人」を見極めることです。
応募が集まる求人でも、集まった候補者と企業の採用要件が合わなければ、決定にはつながりません。一方で、決定実績のある求人でも、対象となる候補者に届かなければ紹介の機会をつくれません。求人の魅力と採用要件を押さえ、集客と決定の両面から評価します。
| 見極める軸 | 確認すること |
|---|---|
| 集まる求人か | 仕事内容・条件が対象の候補者に響き、応募につながっているか |
| 決定が出る求人か | 候補者の経験・希望と採用要件が合い、書類選考・面接から入社まで進んでいるか |
求人ごとに応募の反応と選考結果を確認し、どの候補者層で決定が出ているかを捉えます。給与や知名度、求人件数だけで判断せず、募集状況と実際の選考結果をもとに、扱う求人と集客対象を見直すことが出発点です。
仕組み1.面談後の進捗を、工程ごとに見えるようにする
面談数と決定数の間には、求人提案、応募意思の確認、企業への推薦、選考、内定、承諾という工程があります。集客からは応募単価・有効応募率・面談移行率・選考参加率・内定率・決定率を順に追い、面談後は特に選考参加率・内定率・決定率を分けて見ます。ここをひとまとめにすると、うまくいかなかった理由が「候補者の意欲が低かった」「CAの力が足りなかった」という感想で終わりがちです。
| 止まっている場所 | 確認する論点 |
|---|---|
| 面談後、提案できない | 希望に合う求人があるか。希望や条件を整理できているか |
| 提案しても応募に進まない | 候補者が比較に必要な情報を持てているか |
| 推薦後、選考が進まない | 企業の条件とのずれ、推薦内容、連絡の滞留がないか |
| 内定後、入社に至らない | 条件や仕事への疑問、他社との比較、入社時期を把握しているか |
同じ候補者が複数の求人を検討するため、候補者の人数と求人への応募件数は分けて管理します。応募件数だけを増やしても、支援できている人数や入社数が増えているとは限りません。
選考参加率が低ければ、求人提案と応募意思の確認を見直します。内定率が低ければ、採用要件との適合や選考準備を確認します。決定率が低ければ、内定後の条件確認や辞退理由を掘り下げます。同じ決定数でも、止まっている工程によって打ち手は変わります。
数字の低い工程がわかったら、候補者の経歴や希望、求人条件も合わせて確認します。経験者と未経験者、紹介する職種、集客経路が違うCAを、決定率だけで単純に順位づけしないようにしましょう。
面談後に提案できない原因を、話し方だけに求めない
面談で希望を丁寧に聞けていても、紹介できる求人がなければ選考は始まりません。候補者の希望が整理できていないのか、該当する求人を確保できていないのか、求人を探す作業が追いついていないのかを分けます。同じ「提案できない」でも、面談の見直し、紹介先の開拓、業務の分担と、必要な対応は変わります。
提案後に応募へ進まない場合は、候補者が比較に必要な情報を持てているかも確認します。仕事内容、条件、気になる点への回答がそろわないまま、応募の意思だけを尋ねても判断はできません。
仕組み2.成果が出た支援の「判断」を共有する
成果が出るCAの話し方だけをまねても、同じ結果になるとは限りません。共有したいのは、候補者のどの情報を見て、何を確認し、どのように提案を組み立てたかという判断の過程です。
たとえば、候補者が年収を重視している場合でも、「現職への不満を解消したい」のか「生活上、下げられない水準がある」のかで、整理すべき情報が変わります。希望条件を記録するだけでなく、その理由や優先順位まで共有できると、次の提案が具体的になります。
- 求人を選んだ理由と、候補者の希望との接点
- 候補者が迷った点と、確認に必要だった情報
- 企業の回答によって、見立てを変更した点
- 決定しなかった場合に、次の支援へ持ち越す課題
成功した事例だけでなく、辞退や不採用になった事例も振り返ります。原因を本人の意欲や能力に決めつけず、求人の説明不足、期待のずれ、情報共有の遅れなど、自社で改善できる点を探します。
標準化するのは、誰に対しても同じ求人を提案することではありません。必要な確認を省かず、候補者が納得して選べる状態をつくることです。面談や選考の振り返りでは、本人の希望と意思決定を尊重できていたかも確認します。
仕組み3.CAが支援に使える時間を増やす
CAの予定が埋まっていても、その時間がすべて候補者支援に使われているとは限りません。書類の転記、求人情報の検索、日程調整、進捗の二重入力に時間を取られている場合があります。
まずは、何に時間を使っているかを確認します。そのうえで、情報の保管場所をそろえる、入力を重複させない、日程調整を分担するなど、負担の大きい作業から見直します。ツールを増やす前に、同じ情報を何度も入力していないかを確認するだけでも、改善箇所が見つかります。
AIは下準備を助け、最終確認は人が行う
AIは、面談メモの整理や求人情報の比較、文章の下書きなどを補助できます。ただし、本人が話していない経歴や希望を補ったり、求人条件を誤って要約したりする可能性があります。出力をそのまま推薦文や候補者への案内として使わず、元の情報と照合します。
個人情報を扱うため、利用するサービスのデータ取扱条件と社内の利用ルールを確認することも必要です。AIに任せる作業と人が確認する項目を決め、確認の手間まで含めて時間が減っているかを見ます。
空いた時間は、面談数を増やすだけでなく、提案前の準備や選考中の相談に振り向けることもできます。どの工程が課題なのかによって、使い道を決めましょう。
決定数と一緒に、収益と支援の質も見る
決定数が増えても、媒体広告費や対応工数がそれ以上に増えれば、経営は改善しないことがあります。1件あたりの売上、広告費、担当者の負荷を合わせて見て、増やした決定が事業の継続につながっているかを確認します。
入社後の早期離職や返戻の発生も、振り返りたい項目です。件数だけを目標にすると、候補者の不安を残したまま選考を急がせたり、合わない求人への応募を促したりするおそれがあります。決定数を増やす仕組みは、候補者と企業が納得して入社を迎えるための仕組みでもあります。
よくある質問
応募が集まる求人なら、決定も増えますか?
応募が集まることと、決定が出ることは別に確認します。集まった候補者と採用要件が合っているか、書類選考・面接から入社まで進んでいるかを求人ごとに見て、扱う求人と集客対象を見直します。
面談数を増やす前に何を見直すべきですか?
まず「集まる求人・決定が出る求人」を見極められているかを確認します。そのうえで、面談後の求人提案、応募意思の確認、推薦後の選考が進んでいるかを見ます。最も止まっている工程を見つけることで、集客・求人開拓・対応改善のどれを優先するか考えやすくなります。
CAごとの決定率だけで評価してよいですか?
担当する職種、候補者の経験、集客経路、選考にかかる時間が異なるため、決定率だけの単純比較は避けます。担当条件と対応履歴を合わせて確認し、改善できる行動を整理します。
増員や集客強化の前に、止まる場所を見つける
CA1名あたりの決定数を増やす出発点は、「集まる求人・決定が出る求人」の見極めです。そのうえで、工程ごとの進捗を見えるようにし、支援の判断を共有し、候補者に向き合う時間を確保する。この3つを組み合わせて考えることが大切です。
媒体広告費まで含めた採算の確認は、人材紹介の媒体広告費が回収できない原因で解説しています。
まずは直近の候補者について、「どこで止まったか」「次に確認すべきことは何か」を振り返ってみてください。BOXでは、集客から面談・選考までの数字を見ながら、人材紹介会社向けコンサルティングとして、事業の課題整理と改善を支援しています。詳しくは人材紹介の売上改善・伸び悩み相談をご覧ください。
この記事を書いた人:小川 義治(BOX合同会社 代表取締役)
人材紹介事業の立ち上げ・改善、採用支援に取り組んでいます。